家庭菜園でじゃがいもの栽培をしていると、春作でも秋作でも必ず行うことになるのが「芽かき」という作業です。
種イモから元気に伸びてきた複数の芽の中から、生育の良いものだけを数本残して、残りを引き抜いてしまうあの作業ですね。
私も家庭菜園を始めたばかりの頃、引き抜いたばかりの青々とした元気な芽を手に取って、
「これ、根っこもついているし、もったいないなあ。土に挿したら育つんじゃないかな?」
と疑問に思ったことがありました。
じゃがいも 芽かき 再利用というキーワードで検索してみると、
実は多くのベテラン菜園家さんが、この「捨ててしまう芽」を挿し木(挿し芽)にして、
新しい株として立派に育てていることがわかります。
ゴミとして捨てればゼロですが、植えれば食料になる。これぞ家庭菜園の醍醐味ですよね。
しかし、ただ単に土に挿せば良いというわけではありません。
じゃがいも特有の生理生態を理解していないと、せっかく植えても枯れてしまったり、
最悪の場合は毒素を含んだ危険なイモができてしまったりするリスクも潜んでいます。
この記事では、私が実際に畑で試行錯誤して確立した、失敗しない挿し木の手順や、
家族の健康を守るために絶対に知っておくべき安全管理のポイントについて、
自身の失敗談も交えながら徹底的に解説します。
この記事で分かること
- 水耕栽培と直植えそれぞれの具体的な手順
- 品種による向き不向きと成功率の違い
- 病気を防ぐための残渣の正しい処理方法
- 加熱しても消えないソラニン毒素への対策
じゃがいもの芽かきを再利用する驚きの効果

通常は廃棄物として処理される「芽かき後の芽」ですが、
これらは植物生理学的にも非常に若い組織であり、爆発的な成長エネルギーを秘めています。
このエネルギーをうまく活用することで、種イモを購入するコストを抑えつつ、収穫量を増やすことが可能になります。
挿し木で増やす水挿しの手順とコツ

初心者の方が最初に挑戦する場合、私は断然「水挿し(みずさし)」をおすすめしています。
いきなり土に植える方法もあるのですが、土の中は見えないため、
「ちゃんと根が出ているのかな?」「腐っていないかな?」とヤキモキしてしまうことが多いからです。
水挿しであれば、白い根が伸びてくる様子を毎日観察できるので、
成功体験を得やすく、植物の生命力をダイレクトに感じることができます。
失敗しない水挿しの準備と手順
具体的な手順をご紹介します。まず、芽かきで引き抜いた芽を用意しますが、
この時、できるだけ「白い地下茎部分」が長く残っているものを選んでください。
この白い部分から発根しやすいからです。
次に、吸水面を広げるために、茎の根元を清潔なカッターナイフやハサミで斜めにスパッとカットします。
切れ味が悪いと組織が潰れて腐りの原因になるので注意が必要です。
容器はコップや空き瓶で構いませんが、光を通さない遮光性のある容器の方が発根が良い傾向にあります
(アルミホイルを巻くだけでもOKです)。
水を入れ、切り口が2〜3cmほど浸かるようにして、
直射日光の当たらない明るい室内(レースのカーテン越しなど)に置きます。
この「直射日光を避ける」というのが最初のポイントです。
毎日の管理と定植のタイミング
管理といっても難しいことはありません。最も重要なのは「水を毎日交換すること」です。
水は放っておくとすぐに腐敗菌が繁殖し、水中の酸素も欠乏します。
こうなると切り口がドロドロに溶けて腐ってしまいます。
毎日新鮮な水に入れ替えることで、酸素を供給し、清潔な状態を保つことができます。
順調にいけば、水温が20℃前後で約1週間〜10日ほどで、切り口付近から真っ白な根(不定根)がチョロチョロと生えてきます。
根の長さが1cm〜2cm程度になったら、いよいよ土へのデビューです。
根が長く伸びすぎると、土に植える際に折れてしまったり、水中環境に慣れすぎて土壌環境に適応できなくなったりするので、
「根が出始めたら早めに植える」のがコツです。
芽をそのまま土に植える最適な時期
「毎日水を換えるのが面倒くさい」「大量に芽かきが出たので全部処理したい」という方には、
畑やプランターの土に直接挿す「直挿し(じかざし)」が効率的です。
ただし、水挿しのように発根を確認できない分、
植え付ける「時期」と「芽の状態」が成功率を左右する決定的な要因となります。
ベストなタイミングは「草丈15cm」

結論から言うと、親株の草丈が10cm〜15cmくらいに育った頃、
つまり「通常の芽かきを行う適期」こそが、挿し芽のベストタイミングです。
この時期の芽は、植物として「青年期」にあたり、細胞分裂が非常に活発で、
傷ついた組織を修復して根を出す力(再生能力)がピークに達しています。
逆に、これを過ぎて親株に蕾(つぼみ)が見え始める時期になると、
植物の体は「成長モード」から「生殖モード(花やイモを作る段階)」に切り替わってしまいます。
茎も硬く木質化し始め、この段階の芽を挿しても、発根する力が弱く、
根付いたとしても大きなイモが望めません。
「芽かきをしたら、その場ですぐに隣の空きスペースに植える」。このスピード感が重要です。
土壌の水分調整が鍵
直挿しをする場合、事前に土壌にたっぷりと水をまいておくことが大切です。
乾いた土に挿すと、切り口の水分が土に奪われてしまい、発根する前に干からびてしまいます。
一方で、常にビチャビチャの状態だと切り口が窒息して軟腐病(なんぷびょう)などの原因になります。
「しっとりと湿っているが、握っても水が滴らない程度」の水分量をキープした土に、
割り箸などで深さ5cm〜10cmほどの穴を開け、優しく芽を差し込んで土を寄せます。
>>じゃがいもの花が咲いたら追肥は必要?ベストなタイミングを解説 - saien-Labo
>>じゃがいも収穫後に洗ってしまった!腐る前にやるべき保存と救済策 - saien-Labo
失敗を防ぐ活着管理の重要ポイント
挿し木をした直後、多くの人が直面する失敗が「翌日見たら、完全に萎(しお)れて地面にへばりついていた」という現象です。
これは「蒸散(葉から出ていく水分)」が「吸水(切り口から吸う水分)」を上回ってしまっている状態、
つまり脱水症状です。根がない状態の挿し穂は、人間で言えば点滴だけで生きているような不安定な状態。
ここを乗り切る「活着(かっちゃく)管理」こそが、再利用栽培の最難関ポイントと言えるでしょう。
物理的に蒸散を抑えるテクニック

まず、挿し穂を作る段階で、葉っぱの枚数を減らしてあげることが有効です。
大きな葉がついていると、そこからどんどん水分が逃げていきます。
下のほうの葉は取り除き、上の方の大きな葉はハサミで半分にカットしてしまうのもプロの技です。
かわいそうに見えますが、これで水分の放出量を物理的に減らすことができます。
遮光と保湿で守る
植え付け直後の3日間〜1週間は、絶対に直射日光に当ててはいけません。
晴天の日に植え付けると、数時間で枯れてしまうこともあります。
曇りや雨の前日を狙って作業するのがベストですが、もし晴れが続くようなら、
寒冷紗(かんれいしゃ)や不織布、なければ新聞紙などをふんわりとかけて「日陰」を作ってあげてください。
特に寒冷紗は、適度な光を通しながら強い日差しと乾燥から苗を守ってくれるので、一つ持っておくと非常に便利です。
風も大敵です
日光だけでなく、強い風も植物の水分を奪います。
風が強い日は風よけを設置するか、プランターなら風の当たらない場所に移動させましょう。
「日陰・無風・高湿度」が活着までのキーワードです。
また、根が出るまでは土からの吸水が期待できないため、
霧吹きで葉っぱに水をかける「葉水(はみず)」を朝夕に行うと、葉からの蒸散を抑えつつ水分補給ができ、
復活が早くなります。葉がシャキッと立ち上がり、新芽が動き出したら活着成功のサインです。
男爵など品種による成功率の違い
「スーパーで買ったじゃがいもを植えてみたけど、品種によって育ち方が全然違う」と感じたことはありませんか?
実は、芽かき再利用においても、品種によって「発根のしやすさ」や
「その後の成長スピード」に明確な遺伝的な差が存在します。
無駄な努力を避けるためにも、品種ごとの適性を知っておくことは非常に有益です。
早生品種が圧倒的に有利な理由
私の経験上、そして多くの栽培データからも、
「男爵(だんしゃく)」や「キタアカリ」といった早生(わせ)品種は、挿し芽の成功率が非常に高いです。
これらの品種は、もともと初期成育の勢いが強く、太くて丈夫な芽を出す性質があります。
挿し木にした後もすぐに根を出し、短期間で塊茎(イモ)を肥大させる能力に長けています。
挿し芽栽培は、どうしても親株よりもスタートが1ヶ月ほど遅れてしまいます。
日本の気候では、6月下旬〜7月になると梅雨の長雨や猛暑が訪れ、じゃがいも栽培には厳しい環境になります。
晩生(おくて)の品種だと、イモが太る前に暑さで枯れてしまうリスクが高いのですが、
早生品種ならこの「タイムリミット」までに逃げ切れる可能性が高いのです。
| 品種名 | 再利用の適性 | 特徴と対策 |
|---|---|---|
| 男爵(だんしゃく) | ◎(非常に良い) | 芽が太く、茎もしっかりしているため挿しやすい。初期成育が早く、梅雨前に収穫しやすい。 |
| キタアカリ | ◎(非常に良い) | 男爵同様に萌芽力が強い。イモ付きが良く、小さな株でも収穫が期待できる。 |
| メークイン | △(やや難しい) | 芽が細く、徒長(ひょろ長く伸びる)しやすい。植え付け後に倒れやすく、丁寧な管理が必要。 |
| シンシア | ○(普通) | 初期成育はややゆっくりだが、病気に強いため、活着すれば安定して育つ。 |
もし、これから種イモを購入して「芽かき再利用も楽しみたい」と考えているなら、
迷わず男爵やキタアカリを選ぶことをおすすめします。
ジャガ芽挿し農法で収量アップ
ここまで「余った芽の再利用」についてお話ししてきましたが、最近ではこの技術をさらに発展させ、
最初から「芽」を採ることを目的とする「ジャガ芽挿し農法(ジャガ芽だけ植え)」という革新的な栽培方法が注目を集めています。
これは、もはや「再利用」の枠を超えた、積極的な増殖技術です。
種イモ代を10分の1にする裏技
通常の栽培では、種イモ1kgから収穫できる量は10倍〜15倍程度ですが、
この農法では、あえてLサイズや2Lサイズの大玉種イモを用意します。
大きなイモには豊富な養分が蓄えられており、そこから無数の太い芽が発生します。
この芽をすべてかき取り、1本ずつ独立した苗として植え付けるのです。
計算上、1個のLサイズ種イモから10本〜15本の苗(芽)が採取できます。
それぞれの苗から3〜4個のイモが収穫できれば、種イモ1個から合計で30個〜50個以上のイモが収穫できることになります。
種イモの購入コストが高騰している昨今、このコストパフォーマンスは圧倒的です。
そうか病対策としてのメリット
さらに、この農法には意外なメリットがあります。それは「そうか病」にかかりにくくなること。
そうか病は、イモの表面にかさぶたのような病斑ができる病気ですが、種イモが感染源となるケースが多々あります。
しかし、芽だけを採取して植え付けるこの方法では、種イモ(感染源)を畑に持ち込まないため、
病気のリスクを遮断できるのです。
結果として、肌のきれいなツルツルしたじゃがいもが収穫できる確率がグンと上がります。
じゃがいもの芽かき再利用と安全性の真実
「無料で増やせて、病気も減るなんて最高じゃないか!」と思われたかもしれません。
しかし、光があれば影があるように、この栽培法には必ず知っておかなければならない「食品安全上のリスク」が存在します。
ここからは、命を守るために避けては通れない、毒素のお話です。
>>じゃがいもの芽かきが遅れた…その後のリカバリー戦略は? - saien-Labo
ソラニンの毒性と食中毒リスク

じゃがいもがナス科の植物であることはご存知でしょうか。
ナス科の植物には、害虫や動物から身を守るためにアルカロイドという毒素を持つものが多く、
じゃがいもにも「ソラニン」や「チャコニン」という天然毒素(グリコアルカロイド)が含まれています。
なぜ「再利用」でリスクが高まるのか?
通常、これらの毒素は「芽」の部分や、光に当たって緑色に変色した「緑化(りょくか)」部分に高濃度で蓄積されます。
通常の種イモ栽培では、イモは種イモよりも深い位置(ストロンの先)に形成されることが多いのですが、
挿し芽栽培の場合、種イモがないため、茎の基部から直接ストロンが伸び、
地表ギリギリの浅い位置に新しいイモができやすいという特性があります。
浅い位置にイモができるということは、成長に伴って土から顔を出し、日光にさらされるリスクが極めて高いことを意味します。
日光に当たったじゃがいもは、防御反応として葉緑素を作り緑色になり、
同時に猛毒のソラニンを合成します。
これを「天然だから安全」と勘違いして食べると、大変なことになります。
中毒症状について
ソラニン中毒の症状は、食後数十分から数時間で現れます。腹痛、激しい嘔吐、下痢、頭痛、めまいなどが主な症状です。
成人でも苦しみますが、体重の軽い子供の場合、少量の摂取でも重篤な症状を引き起こす可能性があるため、特に注意が必要です。
加熱で消えない毒の正しい対策
よくある誤解に、「毒があっても、カレーや肉じゃがでしっかり煮込めば消えるだろう」
「油で揚げれば大丈夫だろう」というものがあります。
しかし、これは科学的に完全に間違いです。
熱に強い毒素の正体

ソラニンやチャコニンの分解温度は、およそ270℃以上と言われています。
水が沸騰する温度は100℃、天ぷらなどの揚げ油でも180℃程度ですから、
家庭料理の調理温度では、この毒素を分解・無毒化することはできません。
実際に、学校給食などでジャガイモによる集団食中毒が発生した事例の多くは、加熱調理された料理で起きています。
この点について、農林水産省も公式に注意喚起を行っています。
食品安全に関する正しい知識を持つことが、家庭菜園を楽しむための第一歩です。
(出典:農林水産省『ジャガイモによる食中毒を予防するために』)
栽培中と収穫後の鉄則

では、どうすれば防げるのでしょうか?
答えは「物理的に光を遮断する」しかありません。
まず栽培中は、通常よりも回数を多くして「土寄せ(つちよせ)」を行います。
株元にしっかりと土を盛り、イモが地表に出ないように管理します。
もし土寄せが大変であれば、遮光性の高い黒マルチを使うのも非常に有効です。
そして収穫時、もし緑色になっているイモを見つけたら、残念ですが廃棄するか、
緑色の部分が完全になくなるまで厚く皮を剥き取ってください。
「もったいない」と思って緑の部分を食べることだけは絶対に避けてください。
根がつかない時の対処と発根促進
話を栽培技術に戻しましょう。いざ挿し木をしたけれど、どうしても根がつかずに枯れてしまう…という場合、
いくつかの「ドーピング」的なテクニックで救済できることがあります。
活力剤と保護剤の活用
発根にはエネルギーが必要ですが、切り離された芽には貯蔵養分が少ないため、外部からサポートしてあげると成功率が上がります。
園芸店で手に入る「メネデール」などの植物活力剤(鉄分を含む水溶液)を100倍に薄め、
水挿しの水に使ったり、植え付け後の水やりに使ったりすると、発根が促進されます。
また、土に直接挿す場合、切り口が腐るのを防ぐために、
「草木灰(そうもくばい)」や「珪酸塩白土(ソフトシリカ・ミリオンなど)」の粉末を切り口にまぶしてから植えるのもプロの知恵です。
草木灰はアルカリ性で殺菌効果があり、珪酸塩白土は切り口の腐敗を抑えて発根を促す効果があります。
「二度切り」によるリセット
もし、水挿しをしていて切り口が茶色く変色して腐り始めたら、諦めずに腐った部分よりも上の、
健康な緑色の部分で切り直してください(切り戻し)。
清潔な水と容器で再スタートすれば、そこからリカバリーして発根することも珍しくありません。
コンポスト投入は病気のリスクあり
家庭菜園愛好家の中には、SDGsの観点から「生ゴミや残渣をコンポストで堆肥化している」という方も多いでしょう。
しかし、じゃがいもの残渣(芽かきした芽、収穫後の茎や葉、腐ったイモ)に関しては、
一般的な家庭用コンポストへの投入は推奨できません。
病原菌はしぶとく生き残る
じゃがいもの大敵である「そうか病菌」や「疫病菌」は、土壌中や植物残渣の中で何年も生き続ける非常にしぶとい菌です。
これらの菌を死滅させるには、60℃〜70℃以上の高温状態を数日間維持する必要があります。
家庭用のコンポストや堆肥枠では、発酵熱がそこまで上がらなかったり、
温度ムラができたりすることが多く、病原菌が死滅せずに生き残るケースが多々あります。
病気の循環を断つ
もし、病原菌が残ったままの堆肥を翌年の畑に混ぜ込んだらどうなるでしょうか?
自らの手で病気を畑全体に広げてしまうことになります。
これを防ぐため、じゃがいもの残渣に関しては、「燃えるゴミとして出す」か、
条例で許可されている地域であれば「焼却処分」するのが、最も確実で安全な処理方法です。
じゃがいもの芽かき再利用で楽しむ菜園
今回は、じゃがいも 芽かき 再利用というテーマで、単なるリサイクルを超えた栽培技術と、
それに伴うリスク管理について深掘りしてきました。
「挿し芽」は、植物が本来持っている生命力を最大限に引き出す、とても興味深い栽培方法です。
数本の芽から始まった小さな苗が、土の中でしっかりと根を張り、
やがてゴロゴロとした新しいイモを実らせる姿は、何度見ても感動します。
毒素への警戒や病気への配慮など、守るべきルールはいくつかありますが、
それさえクリアすれば、コストゼロで収穫を倍増させることも夢ではありません。
最初は失敗することもあるかもしれませんが、まずは数本、遊び心を持って「ジャガ芽挿し」にチャレンジしてみてください。
きっと、いつものじゃがいも栽培が、もっと奥深く、楽しいものになるはずです。
