家庭菜園で愛情を込めてナスを育てている最中、ふと葉に目をやると白いかすり状の斑点が…。
それは、多くの栽培者を悩ませるハダニの仕業かもしれません。
被害が日に日に広がる様子を目の当たりにすると、「もうこのナスはハダニで手遅れかもしれない」と、諦めの気持ちがよぎることもあるでしょう。
ですが、すぐに見限ってしまうのはまだ早いです。
この記事では、ナスにハダニの被害が見られた際に、手遅れかどうかを冷静に判断するための症状の見極め方から、
具体的な対策までを網羅的に解説します。
手遅れか判断するハダニの症状を詳しく知り、ナスにハダニが発生する原因とは何かを理解することで、適切な初動対応が可能になります。
さらに、ハダニの基本的な駆除方法はもちろん、農薬に頼りたくない方向けに木酢液を使ったハダニへの効果についても深掘りします。
特に、家庭菜園でハダニがナスについた時の具体的な対処法を知りたい方のために、ナスがハダニで手遅れになる前の対策を徹底的にまとめました。
ナスのハダニに効く農薬の正しい選び方や、ハダニ対策におすすめの農薬を紹介するだけでなく、
ナスのハダニが嫌うハーブでの予防策、
そして万が一被害が広がってしまった場合のハダニ被害からのナスの復活方法まで、
ナスがハダニで手遅れになる前のあらゆる対処法を、専門的な視点から詳しくご紹介します。
この記事で分かること
- 手遅れとされるハダニ被害の具体的な症状が詳細にわかる
- 化学農薬から自然由来の資材まで、状況に応じた駆除方法が選択できる
- ハダニの生態に基づいた効果的な発生予防対策が学べる
- 被害を受けて弱ったナスを回復させ、再び収穫を目指すための具体的なケア方法がわかる
ナスにハダニは手遅れ?症状の見極め方

- 手遅れか判断するハダニの症状
- ナスにハダニが発生する原因とは
- ハダニの基本的な駆除方法
- 木酢液を使ったハダニへの効果
- 家庭菜園でハダニがナスについた時
手遅れか判断するハダニの症状

ナスにハダニが発生したからといって、直ちに「手遅れ」と判断する必要はありません。
しかし、被害が一定のレベルを超えると、回復が極めて困難になるのも事実です。
その危険なサインを正確に見極めることが、栽培を続けるかどうかの重要な判断基準となります。
一般的に、株全体の葉の8割以上が白化・黄化し、触るとパリパリと乾燥している状態は、手遅れの可能性が非常に高いサインです。
ハダニはナスの葉裏に無数に寄生し、口針を細胞に突き刺して内容物を吸汁します。
この食害により葉の葉緑素が破壊され、白いかすり状の斑点が現れます。
被害が進行すると斑点同士がつながって葉全体が白っぽくなり、光合成能力を完全に失ってしまうのです。
光合成ができない植物は新たなエネルギーを作り出せず、生命維持が困難になります。
さらに深刻なのは、株の成長点が完全に機能を停止し、新しい葉や脇芽、花が全く出てこない状態です。
これは、株全体の生命力が限界に達していることを示しています。
また、ハダニは移動や外敵からの防御のためにクモの巣のような極めて細い糸を出します。
この糸が株全体を覆い尽くしている場合も、ハダニの密度が著しく高く、株が吸い尽くされている危険な状態と言えるでしょう。
これらの症状が複数同時に見られる場合は、残念ながら回復は極めて困難と判断せざるを得ません。
ハダニ被害の進行度チェックリスト
ご自身のナスの状態を、以下の表で客観的にチェックしてみてください。回復可能性の判断材料になります。
| チェック項目 | 手遅れの可能性が高い状態 | まだ回復の可能性がある状態 |
|---|---|---|
| 葉の色・状態 | 大部分が白・黄・褐色で枯れ、光沢がない。触ると簡単に崩れる。 | 白い斑点や部分的な変色はあるが、まだ緑色の部分に張りがある。 |
| 葉の量 | 食害によりほとんど落葉し、茎や枝だけが目立つ痛々しい姿。 | 葉は多く残っており、被害は下葉や一部の葉に限定されている。 |
| 株の生育 | 頂点の芽(頂芽)や脇芽が黒ずんで枯れており、成長が完全に停止。 | 生育スピードは遅いが、先端に小さな新しい葉が見られる。 |
| 糸の蔓延度 | 株全体が白い糸で覆われ、ミイラのような外観になっている。 | 葉の裏や付け根に、部分的に糸が見られる程度。 |
もし、あなたのナスが「まだ回復の可能性がある状態」に当てはまるのであれば、希望は十分にあります。
被害の初期段階であるほど、適切な対処による回復率は格段に高まります。諦めずに、すぐに行動を開始しましょう。
ナスにハダニが発生する原因とは

ナスのハダニ被害を効果的に防ぐためには、なぜハダニが発生するのか、その根本的な原因を理解しておくことが不可欠です。
ハダニが大量発生する二大要因は、「高温」と「乾燥」です。
この2つの条件が揃うと、ハダニにとって楽園のような環境となり、爆発的に増殖します。
ハダニは気温が20℃〜30℃で、湿度が低い環境を極端に好みます。
ナミハダニの場合、気温25℃・湿度60%の条件下では、卵から成虫になるまでの期間がわずか10日程度と非常に短く、
1匹のメスが一生のうちに100個以上の卵を産むと言われています。
つまり、好条件が続くと、ネズミ算式に個体数が増加してしまうのです。
特に、梅雨が明けて気温が上昇し、雨が少なく乾燥した天気が続く7月から9月は、ハダニの活動が最も活発になるため、最大限の警戒が必要です。
ハダニの発生を助長する栽培環境
- 軒下やベランダ:雨が直接当たらず、コンクリートの照り返しで高温・乾燥になりやすい場所。
- ビニールハウスやトンネル栽培:雨風を防ぐため、高温・乾燥状態になりやすい典型的な環境。
- 風通しの悪い場所:空気がよどみ、湿気がこもらないためハダニの好む環境が維持されやすい。
- 窒素過多の土壌:窒素肥料が多すぎると、ナスの葉が軟弱に育ち、ハダニが吸汁しやすくなります。
また、ハダニは体長0.5mm前後と非常に小さく、肉眼での確認が困難です。
そのため、気づかないうちに圃場に侵入していることが少なくありません。
主な侵入経路としては、風に乗って遠くから飛来するケース、作業者の衣服や農機具に付着して持ち込まれるケース、
そして購入した苗に最初から卵や成虫が付着しているケースなどが挙げられます。
周辺の雑草もハダニの温床となるため、圃場内外の環境管理も非常に重要です。
これらの原因を理解し、ハダニにとって住みにくい環境を意図的に作ることが、最良の予防策となります。
関連
ハダニの基本的な駆除方法

ハダニの発生を確認したら、被害が初期段階であるほど効果的な、物理的駆除法から試すのがセオリーです。
農薬に頼る前に、まずは手軽で環境への負荷も少ない方法で、ハダニの密度を徹底的に下げましょう。
最も基本的かつ効果的な方法は、「水による洗い流し」です。
前述の通り、ハダニは水を極端に嫌います。この性質を利用し、ホースのシャワーやスプレーのジェット水流で、
ハダニが潜む葉の裏を重点的に洗い流します。
これにより、成虫や幼虫を物理的に叩き落とし、数を減らすことができます。
特に乾燥が続く猛暑日には、朝夕の涼しい時間帯にこの「葉水」を習慣づけることが、効果的な発生予防にも繋がります。
プロの農家さんも実践する基本の技ですが、ポイントは「葉の裏」を徹底的に狙うことです。
表から水をかけるだけでは、葉陰に隠れたハダニには届きません。
少し面倒でも、ノズルの角度を変えながら下から上へと水を噴射するのがコツですよ。
次に有効なのが、「被害葉の除去」です。
ハダニが集中している葉や、すでに白く変色してしまった葉は、光合成能力も落ちており、何よりハダニの供給源となってしまいます。
このような葉は、見つけ次第ためらわずにハサミで切り取り、圃場から持ち出しましょう。
除去した葉をその場に放置すると、そこからハダニが移動して被害が再発するため、
必ずビニール袋などに入れて密封し、燃えるゴミとして処分してください。
家庭で試せる自然由来のスプレー
水だけでは心もとないと感じる場合、いくつかの家庭にあるものを利用したスプレーも試す価値があります。
例えば、牛乳を水で2倍程度に薄めたスプレーは、散布後に乾燥する過程で牛乳のタンパク質の膜がハダニの気門(呼吸する穴)を塞ぎ、
窒息させる効果が期待できると言われています。ただし、この方法はデメリットも伴います。
牛乳スプレーの注意点
散布後、牛乳を洗い流さずに放置すると、腐敗して強い悪臭を放ったり、カビや他の病気の原因になったりすることがあります。
必ず晴れた日の午前中に散布し、牛乳が完全に乾いたことを確認した後、翌日には必ず水で丁寧に洗い流してください。
この手間を考えると、他の方法が推奨される場合も多いです。
これらの物理的駆除は、ハダニの密度を確実に減らすための第一歩です。
農薬を使う場合でも、事前にこれらの処置を行っておくことで、薬剤の効果をより高めることができます。
木酢液を使ったハダニへの効果

化学合成農薬の使用を避けたいと考える自然派志向の方々から、ハダニ対策として注目されているのが「木酢液」や「竹酢液」です。
これらは木炭や竹炭を製造する際に出る煙を冷却・液化したもので、有機農業でも土壌改良資材などとして利用されています。
まず理解しておくべき重要な点は、木酢液のハダニに対する主な効果は、殺ダニ効果ではなく「忌避効果」、
つまりハダニを寄せ付けにくくする効果が中心であるということです。
木酢液には、酢酸やフェノール類など200種類以上の有機成分が含まれており、その燻製のような独特の香りをハダニが嫌うとされています。
そのため、すでに大発生してしまったハダニを完全に駆除する目的ではなく、発生初期に密度を抑えたり、
発生を予防したりする目的での使用が適しています。
使用方法は、製品のラベルに記載された希釈倍率を厳守することが大前提です。
一般的には水で200倍~1000倍程度に薄め、スプレーボトルに入れて散布します。
特にハダニが好む葉の裏を中心に、葉の付け根や新芽など、株全体がしっとりと濡れる程度にまんべんなく吹きかけるのが効果を高めるポイントです。
木酢液・竹酢液を使用する際の重要な注意点
- 濃度を厳守する:「濃い方が効くだろう」と自己判断で濃くすると、植物の葉が焼ける「薬害」を引き起こす危険性が高まります。必ず薄い濃度から試しましょう。
- 品質を見極める:安価な製品の中には、タール分などの有害物質が十分に除去されていない粗悪品も存在します。信頼できるメーカーの、成分が明記された製品を選ぶことが重要です。
- 効果を過信しない:木酢液は農薬ではないため、効果の現れ方にはばらつきがあり、持続性も高くありません。被害が拡大し続ける場合は、農薬など他の確実な対策に切り替える判断も必要です。
ちなみに、木酢液は農林水産省によって、病害虫の防除効果が認められ、かつ安全性が明らかな「特定農薬」に指定されています。
これは安全性の証ではありますが、化学農薬のような強力な駆除効果を保証するものではないことを理解した上で、上手に活用することが大切です。
家庭菜園でハダニがナスについた時

家庭菜園で日々成長を楽しみにしているナスに、無数のハダニを発見した時のショックは計り知れません。
しかし、ここでパニックにならず、冷静かつ迅速に行動することが、ナスを救うための最も重要な鍵となります。
最初に行うべきは、被害状況を正確に、そして詳細に把握することです。
ハダニは葉の裏に潜んでいることが多いため、ただ上から眺めるだけでは被害の全体像はつかめません。
一枚一枚、丁寧に葉を裏返して、どの程度ハダニがいるのか、白いかすり状の斑点がどれくらい広がっているのか、
糸が張られていないかなどを入念にチェックしましょう。
被害が下葉の数枚に限定されているのか、それとも株全体、特に成長点のある新芽の周辺にまで及んでいるのかを見極めることが、
次の対策を決定する上で不可欠です。
もし被害がごく一部の葉に限定されている幸運な状況であれば、前述の通り、その葉をハサミで切り取って速やかに処分するのが最も確実で効果的な方法です。
その後、まだ被害が見られない葉も含めて、株全体にしっかりと水をかけ、潜んでいるかもしれない見えないハダニを洗い流しておくことで、
被害の拡大を未然に防ぎます。
家庭菜園だからこそできる!ハダニ対策5ステップ
毎日様子を見られる家庭菜園の利点を最大限に活かした、ハダニ対策の基本フローです。
- 【発見と観察】:「葉の色がおかしい」と感じたら、すぐにルーペなども使って葉の裏を徹底的に観察し、被害範囲を特定します。
- 【物理的除去】:ハダニが密集している葉や、白化が激しい葉は、他の葉への伝染源となるため、ためらわずに切り取ります。
- 【徹底洗浄】:ホースや霧吹きを使い、葉の裏から付け根まで、株全体を水で丁寧に洗い流し、ハダニの密度を物理的に下げます。
- 【予防的措置】:洗浄後、木酢液スプレーなどを散布して、ハダニが再び寄り付きにくい環境を整えます。
- 【継続的な監視】:対策後も安心せず、最低でも1週間は毎日状態をチェックし、ハダニが残っていないか、被害が再発していないかを確認します。
家庭菜園は、商業的な大規模栽培とは異なり、一株一株に手間をかけられるのが最大の強みです。
この利点を活かし、「早期発見・早期対応」を徹底することが、農薬の使用を最小限に抑え、安全で美味しいナスを収穫するための最も確実な道筋となります。
「明日やろう」の一日が、ハダニにとっては数世代分の繁殖時間を与えてしまうことを忘れないでください。
関連
ナスがハダニで手遅れになる前の対策

- ナスのハダニに効く農薬の選び方
- ハダニ対策におすすめの農薬を紹介
- ナスのハダニが嫌うハーブでの予防
- ハダニ被害からのナスの復活方法
- ナスがハダニで手遅れになる前の対処法
ナスのハダニに効く農薬の選び方

物理的防除や自然由来の資材だけではハダニの勢いを抑えきれない場合、最終手段として化学農薬の使用を検討します。
しかし、農薬は使い方を間違えると効果がないばかりか、薬剤抵抗性という厄介な問題を引き起こす可能性があります。
ハダニ防除を成功させるために、農薬を選ぶ際の3つの鉄則を必ず守ってください。
ポイント1:適用作物が「ナス」であることを厳格に確認する
これは基本中の基本であり、最も重要なルールです。
農薬は、農薬取締法に基づき、作物ごとに登録されています。
使用する農薬のラベルや説明書を隅々まで確認し、「適用作物名」の欄に「なす」という表記があることを必ず確認してください。
記載のない作物への使用は、法律で固く禁じられているだけでなく、薬害が発生したり、
収穫物への残留基準を超えてしまったりする危険性があります。
ポイント2:「ハダニ類」に効果がある専門の「殺ダニ剤」を選ぶ
ハダニは昆虫ではなくクモの仲間に分類されます。
そのため、アブラムシやヨトウムシなどに効く一般的な「殺虫剤」では効果が薄い、あるいは全く効かない場合があります。
農薬を選ぶ際は、ラベルの「適用病害虫名」に「ハダニ類」「ナミハダニ」「カンザワハダニ」などの記載があることを確認しましょう。
ハダニに特化した「殺ダニ剤」は、ハダニ特有の生態や生理機能に作用するため、より高い効果が期待できます。
ポイント3:作用性の異なる薬剤を計画的にローテーションする
ハダニ防除における最大の鍵は、「薬剤抵抗性」の発達を防ぐことです。
ハダニは世代交代が非常に早いため、同じ系統の農薬を連続して使用すると、その薬剤に耐性を持つ個体だけが生き残り、
やがてその子孫ばかりが増えて農薬が全く効かなくなってしまいます。
これを回避するために、作用性(農薬の効き方)が異なる系統の薬剤を、順番に、
計画的に使用する「ローテーション散布」が不可欠です。
IRACコードで作用性を確認しよう
農薬の作用性は、ラベルに記載されている「IRACコード」で簡単に見分けることができます。
これは殺虫剤抵抗性対策委員会(IRAC)が定めた国際的な分類コードです。
例えば「コロマイト乳剤」は系統グループ「6」、「ダニトロンフロアブル」は「21A」です。ローテーションを組む際は、この数字が異なるグループの農薬を交互に使うように計画を立てましょう。
これらの3つのポイントを確実に押さえることが、農薬を安全かつ効果的に使用し、厄介なハダニをコントロールするための絶対条件となります。
ハダニ対策におすすめの農薬を紹介

ここでは、ナスのハダニに対して効果が高く、家庭菜園でも比較的入手しやすい農薬をいくつか紹介します。
それぞれの薬剤が持つ特性を理解し、ご自身のナスの状況や防除計画に合わせて最適なものを選びましょう。
まず、すでにハダニが発生し、その勢いを迅速に止めたい場合には、「コロマイト乳剤」や「ダニトロンフロアブル」
のような速効性に優れた薬剤が有効です。
これらの薬剤は、ハダニの神経系やエネルギー代謝を阻害することで効果を発揮し、散布後比較的早く効果が現れます。
卵から成虫まで、幅広いステージに効果があるものが多いのも特徴で、被害の急拡大を食い止めるのに役立ちます。
一方で、薬剤抵抗性の発達が懸念される場合や、従来の農薬の効果が低下していると感じる場合には、
新しい作用性を持つ農薬をローテーションに組み込むことが極めて重要です。
その代表格が「ダニオーテフロアブル」です。
この農薬の有効成分「アシノナピル」は、既存のどの殺ダニ剤とも異なる全く新しい作用機構(IRACコード:33)を持つため、
従来の薬剤に抵抗性を獲得したハダニにも優れた効果を発揮します。
また、日本曹達株式会社の公式サイトによると、ミツバチやマルハナバチ、カブリダニ類などの天敵・有用昆虫への影響が極めて少ないため、
総合的病害虫管理(IPM)にも適しています。
展着剤の活用で農薬効果を最大化!
農薬を散布する際に、「ダイン」に代表される展着剤を規定量加えることを強く推奨します。
展着剤は薬液の表面張力を低下させ、葉の表面に薬液が均一に濡れ広がるのを助けます。
これにより、水を弾きやすいナスの葉や、ハダニが潜む葉の裏にもしっかりと薬液が付着し、雨で流れ落ちるのを防ぐ効果も期待できます。
結果として、農薬本来の効果を最大限に引き出すことができるのです。
| 農薬名(例) | 系統(IRACコード例) | 主な特徴 | 使用上のポイント |
|---|---|---|---|
| コロマイト乳剤 | アベルメクチン系 (6) | 速効性に優れ、ハダニの動きを速やかに止める。 | 抵抗性が発達しやすいため、必ず作用性の異なる薬剤とローテーションする。 |
| ダニトロンフロアブル | METI系 (21A) | 卵・幼虫・成虫の各ステージに有効で、残効性も期待できる。 | METI剤は抵抗性の発達が報告されているため、連用は絶対に避ける。 |
| ダニオーテフロアブル | グループ33 | 新規系統で既存剤抵抗性ハダニに有効。天敵への影響が少ない。 | 抵抗性管理の切り札として、ローテーションの重要な一角に据える。 |
| アファーム乳剤 | アベルメクチン系 (6) | ハダニだけでなく、コナガやアザミウマなど幅広い害虫に効果がある。 | ハダニ専門剤ではないが、他の害虫も同時に発生している場合に便利。 |
農薬使用における絶対的な遵守事項
いかなる農薬を使用する場合でも、製品ラベルに記載されている使用方法、希釈倍率、使用時期、そして作物ごとの総使用回数の制限を厳格に守ってください。
また、散布作業の際は、農薬用マスク、保護メガネ、不浸透性の手袋、長袖長ズボンの作業着を着用し、自身の安全確保を最優先しましょう。
ナスのハダニが嫌うハーブでの予防

化学農薬への依存を減らし、より自然な形でハダニの被害を抑制したいと考える方には、植物同士の力を利用する「コンパニオンプランツ」の導入がおすすめです。
特定の香りや成分を持つ植物をナスの近くで一緒に栽培することで、ハダニを寄せ付けにくくする環境を作り出すことができます。
ハダニ予防のコンパニオンプランツとして最も有名で実績があるのがマリーゴールドです。
鮮やかな花を咲かせるマリーゴールドが根や葉から放出する独特の強い香りには、
ハダニだけでなくアブラムシやコナジラミなど多くの害虫を遠ざける忌避効果があるとされています。
さらに、マリーゴールドの根から分泌される物質は、土壌中の有害なネコブセンチュウの密度を抑制する効果も知られており、
ナスを土の中から守る役割も果たしてくれます。
爽やかな香りが特徴のミント類(ペパーミント、スペアミントなど)も、ハダニが嫌う香りを持つハーブとして有効です。
ただし、ミントは地下茎を伸ばして驚異的なスピードで繁殖する非常に強健な植物です。
安易に地植えにすると、菜園全体がミントに占領されてしまう恐れがあるため、必ず鉢植えやプランターで栽培し、ナスの株元に置くようにしましょう。
他にも、ローズマリー、ラベンダー、カモミールといったハーブ類や、鮮やかな花が食卓も彩るナスタチウムなども、
害虫忌避効果が期待できるコンパニオンプランツとして知られています。
見た目の美しさや収穫後の利用法も考えながら、菜園のデザインに取り入れてみるのも楽しいですよ。
効果はあくまで補助的と心得る
コンパニオンプランツによる害虫忌避効果は、残念ながら100%の保証があるわけではありません。
ハダニの発生を完全にゼロにすることは困難ですが、発生する密度を低く抑え、
大発生のリスクを軽減する補助的な対策としては非常に有効です。
日々の観察や適切な水やり、風通しの確保といった基本的な栽培管理と組み合わせることで、
その効果を最大限に引き出すことができます。
ハダニ被害からのナスの復活方法

ハダニの駆除に成功しても、戦いはまだ終わりではありません。
吸汁被害によって体力を消耗し、弱ってしまったナスを、再び元気な状態へと導くための丁寧なアフターケアが、その後の収穫量を大きく左右します。
復活への道のりで最も重要な鍵を握るのは、適切な水分管理と速やかな栄養補給です。
ハダニの活動を抑制し、しおれた葉に潤いを与えるためにも、土壌が乾燥しすぎないよう水やりを徹底し、
同時に定期的な葉水で株全体の湿度を保つことが基本となります。
しかし、ハダニ被害を受けた株は、根もダメージを受けていることが多く、土壌から十分に水分や栄養を吸収できない状態に陥っています。
そこで絶大な効果を発揮するのが「液体肥料の葉面散布」です。
これは、規定よりもさらに薄く(通常の2倍程度)希釈した液体肥料を、霧吹きなどで葉の裏表に直接スプレーする方法です。
植物は根だけでなく葉からも養分を吸収できるため、弱った根に負担をかけることなく、
ダイレクトに栄養を届けることができます。これにより、新しい葉の展開や株全体の回復を劇的に早めることが期待できます。
ナス復活のための葉面散布 成功のポイント
- 希釈濃度:製品ラベル記載の規定倍率の1.5倍~2倍に薄めます。濃すぎると肥料やけを起こし、逆効果になるため厳守してください。(例:1000倍希釈なら1500~2000倍)
- 肥料の種類:新しい葉や茎の成長を促進する窒素(N)成分がバランス良く含まれた液体肥料がおすすめです。
- 散布の頻度と時間帯:週に1~2回程度を目安に行います。葉の気孔が開いている、日差しの弱い早朝や夕方が最も効果的です。
この葉面散布による栄養補給と並行して、すでに白化して回復が見込めない古い葉や被害のひどかった葉を整理することで、
株のエネルギーを新しい芽の成長に集中させることができます。
植物が本来持つ生命力を信じ、諦めずに丁寧なケアを続けることが、再び美味しいナスを収穫するための最短ルートです。
関連
ナスがハダニで手遅れになる前の対処法
記事のまとめ
- ナスの葉に現れる無数の白いかすり状の斑点はハダニ被害の典型的な初期サイン
- 株全体がクモの巣のような細い糸で覆われ始めると手遅れに近い危険な状態
- ハダニは気温20〜30℃で乾燥した環境を好み特に7月〜9月の猛暑期に大発生しやすい
- 最も基本的で効果的な駆除方法は葉の裏側を狙った強力な水シャワーでの洗い流し
- 被害がひどく白化した葉はハダニの供給源となるため見つけ次第速やかに取り除き処分する
- 木酢液や竹酢液は殺ダニ効果よりもハダニを寄せ付けにくくする忌避効果を期待して予防的に使う
- 農薬は必ずラベルを確認し「ナス」と「ハダニ類」に登録があるものだけを使用する
- 同じ系統の農薬を連続して使うと薬剤抵抗性が急速に発達するため絶対に避ける
- 作用性の異なる農薬を順番に使うローテーション散布がハダニ防除の最も重要な戦略
- ミツバチやカブリダニなど天敵や有用昆虫への影響が少ない農薬を選ぶ視点も大切
- マリーゴールドや鉢植えのミントなどを近くに置くコンパニオンプランツは予防策として有効
- ハダニは乾燥を嫌うため土壌の水分管理と定期的な葉水が効果的な予防につながる
- 被害で弱った株には薄めた液体肥料の葉面散布が根に負担をかけず速やかな回復を促す
- ナスのハダニ被害からの復活は何よりも早期発見と迅速な初期対応にかかっている
- 手遅れの状態を防ぐには日頃から葉の裏を注意深く観察する地道な習慣が最も大切